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【私の想い】
私は音楽家です。小さい頃に経験した原発事故と、その後の避難生活はとても
つらく悲しい思い出です。その後も学校で避難民はいじめにあったりしていました。
そんなとき、私は音楽に出会い、それからどんなにつらいときも悲しいときも
音楽がそばにいて、私を励まし、勇気づけてくれました。
私は音楽のチカラを信じています。
その音楽のチカラで私が救われたように、私の音楽で励まされ、勇気づけられるひとが
いるかもしれません。世界中の音楽家や文化・芸術に携わる人々は、そのことを知っています。
このたびのロシアによるウクライナへの戦争は、絶対にあってはならないことです。
それは、誰もがそう思うはずです。では、縁あって日本に来ているロシア人が解雇されたり、
昔から親しまれているロシア料理店が嫌がらせを受けたりしているのはどうなのでしょう。
多様性を尊重する、平和を願う、そういう言葉は、心地よいフレーズとしてよく使われますが、
本当の意味を考えると、そこには忍耐力、努力、想像力が欠かせません。
私たちは幸運にも自由に生きられる世界にいます。好きな食べ物を食べ、好きな音楽を聴き、
好きなファッションを楽しみ、好きなことを発信しています。
でも、あなたの好きな食べ物を嫌いな人もいます。あなたの好きな音楽やファッションを
否定する人もいます。あなたと違う人が世界中にいます。
心地よくなくても、そういう人たちの言葉を黙って聞いて、その人の考えを受け入れようとし、
なぜその人がそうであるのかを自分が相手の立場だったらと想いを巡らすことが、
多様性を尊重することに繋がるものと思います。
わかりやすく言うと、あなたの大好きな食べ物が食べられない人がいます。
なんでこんなに美味しいものが食べられないんだろう。かわいそうに。
ここで終わってはいけないのです。そのひとの立場になって、自分の嫌いなものを
食べてみようとしてください。我慢して食べる、食べやすく料理してみる、もしかすると、
アレルギーで食べられないのかもしれない、と気づいたりするかもしれません。
そういう積み重ねが多様性を尊重するということだし、そういう姿勢があれば、
日本にいるロシア人や日本のロシア料理店への態度も変わるかもしれません。
父親がロシア人で母親がウクライナ人という家族もたくさんあるのです。
日本は、海に囲まれた国で、日本語を話し、独特の文化を持っていますので、
欧州の複雑さが分かりづらいと思いますが、考えてみてください。
余談ですが、私は最初から梅干しが大好きです。でも納豆は食べられませんでした。
みんなに納豆は体に良いと言われて、頑張って一粒たべました。いまでは匂いの少ない
ひき割り納豆なら少し食べられます。わらに包まれた水戸納豆を食べるのが夢です。
日本は平和という北極星を理想として掲げ、いつでも見上げることができる憲法を
持っています。戦争が起こると星がみえづらくなるかもしれませんが、しばらくすると満天の
星空にその星がまた輝くはずです。平和の実現にも忍耐力、努力、想像力が必要です。
戦時に文化・芸術は沈黙してはならない、の言葉があります。どういうことでしょう。
たくさん働いて体が疲れたときは、食べ物を食べ、ゆっくりと眠ることでまた元気になります。
辛く悲しいことがあったり、心配で眠れないとき、きっと音楽やいろいろな文化・芸術が
その心を癒やして安らぎを与え、また元気になれるのだと思います。
食べ物や睡眠、空気と同じくらい、人間らしく生きるには文化・芸術のチカラが必要なのです。
メルケルさんがコロナのときに言ったのは、そのことでしょう。
私は、平和と芸術は双子の兄弟、そう思います。お互いがお互いのチカラになるのです。
【最後に】
音楽家として、本当は音楽を通じて想いを伝えるべきですが、言葉でないと
伝わりにくいこともあります。これから私が取り組むいろいろなプロジェクトに様々な
ご意見やご批判もあるかと思います。おそらく反論したり説得したり、時間や心を
浪費したくないこともあり、その理由や想いをお伝えしたいと考え、伝えるべきことを
オフィスジルカスタッフとこうしてまとめて、お伝えしました。
ナターシャ・グジー
オフィスジルカ
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